福岡を拠点に料理教室を主宰する、旅する料理家・フードコーディネーター。
このエッセイでは、そんな私の日常と旅の記録を綴っています。
広告や雑誌の撮影現場、料理教室、旅先での食体験——
そのすべてが、私の礎となっています。
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はじまりの違和感 福岡のフードコーディネーターの仕事
「盛り付けなんて、うちの社員でやりますから」
打ち合わせの席で、そんなふうに言われたとき、
私は笑顔のまま、そっと手を止めました。
「そうなんですね」と頷きながらも、
心の奥に、小さな声がひとつ——
——じゃあ私は、何故ここに?
そのとき、ふと感じたのです。
“フードコーディネーターって、まだまだ知られていないんだなあ”と。
おいしそう、の正体
「おいしそうに見せる」って、実はとても繊細なこと。
それは、料理の命をそっとすくいあげるような、
目に見えない温度や物語を、写真にそっと映すような作業です。
たとえば、焼きたてのパンケーキ。
外はカリッと、中はふんわり。
とろけかけのバターがゆっくりと流れ出し、
バナナの断面に朝の光が当たって、メープルシロップが艶やかにひかる。
「おいしそう」の条件はそろっているはずなのに、
いざレンズをのぞいてみると、なんだか少し違って見えることがあります。
バナナの影が強すぎたり、
シロップが思ったほど艶を拾ってくれなかったり、
お皿の中で、主役がぼんやりとにじんでしまったり。
そのとき私は、そっと手を伸ばします。
パンケーキの角度を数度だけ変えてみたり、
バターがちょうど“とろけきる直前”を待って、
メープルをもう一滴、ゆっくりと垂らしてみたり。
たったそれだけのことで、
写真の中の料理は息を吹き返したように輝きはじめるのです。
料理が語りはじめるとき
ある日、撮影現場でシェフが盛りつけたパスタを見て、
「完璧です」と満足そうに微笑んでいました。
でも、カメラを覗くと——
麺はひとまとまりに見え、ソースは沈み、ハーブは少しだけ元気をなくしていた。
そこで私は、そっと麺をゆるめ、
光を拾う場所にハーブを置き、ソースをひと匙。
その一皿は、やっと語りはじめたように見えました。
まるで料理が、自分の物語を私に委ねてくれたような——そんな瞬間でした。
「なるほど、こうやって仕上げていくんですね」
そう言ってもらえたあの瞬間が、私は今でも少し誇らしいのです。
わたしの仕事 福岡でフードコーディネーター
フードコーディネーターの仕事は、
ただ盛りつけることじゃない。
料理がいちばん美しい瞬間を迎えるまで、
そっと寄り添って、そっと整えて、
一皿の物語を翻訳するような、そんな時間です。
SNSや広告で見かける“おいしそう”の裏側には、
小さな気配りと、工夫と、繊細な観察、
そして、ほんの少しの執念があるのです。笑
ピンセットと霧吹きをバッグに忍ばせて、
私は今日も現場に向かいます。
福岡を拠点にフードコーディネーターとして、料理撮影やレシピ開発など全国対応しています。
広告・雑誌・Web媒体を中心に、撮影現場の盛り付けやスタイリングもお任せください。
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